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合言葉を失った

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子どもが巣立った後の、あの静けさについて。

子どもが家を出た日のことを、覚えていますか。

玄関の扉が閉まる音。少しずつ遠ざかる足音。そして突然、家の中に広がった、あの静けさ。

「よかった」と思ったはずなのに、なぜか胸に穴が開いたような感覚があった。そういう方は、少なくないはずです。

その虚しさは、弱さではありません

子どもが自立したとき、多くの親が「空の巣症候群」と呼ばれる感覚を経験します。

達成感と喪失感が、同時にやってくる。「ちゃんと育てた」という満足感の裏に、「自分の役割が終わってしまった」という静かな痛みが宿る。

その感覚に、罪悪感を持つ必要はありません。

長年、誰かのために動き続けてきた。子どもの笑顔のために、子どもの未来のために、自分の時間を惜しみなく使ってきた。

その日々が突然終わったとき、心にぽっかり空白が生まれるのはそれだけ真剣に、親であり続けてきた証です。

「終わった」のではなく、「変わった」のです

ただ、一つだけお伝えしたいことがあります。

子育てが終わったのではありません。あなたの中に育った「誰かを愛する力」は、どこにも消えていません。

子どもへの愛情を通じて磨かれたその力は、今もあなたの中に、温かく残っています。

問題はただ一つ。その力の、向かう先がなくなった、ということです。

愛情は、使われないと、じわじわと人を蝕みます。使われることで初めて、人を生かすものになります。

子育ての経験は、あなただけの財産です

子どもを育てた経験を持つあなたには、子育て未経験の人には持てないものがあります。

子どもがどんな言葉に傷つくか、知っている。どんな瞬間に安心するか、知っている。叱ることと見守ることの、難しい境界線を、身をもって学んできた。

その経験は、今まさに「自分を愛してくれる大人」を必要としている子どもたちに、直接届けられるものです。

この国には今、親のもとで暮らせない子どもが約4万2千人います。

虐待、育児放棄、家庭の崩壊。様々な事情で、家族と引き離された子どもたちです。

彼らが必要としているのは、特別な技術ではありません。子どもとともに泣いたことがある大人。

子どものために眠れなかった夜を知っている大人。そういう人間の温もりです。

あなたには、それがある。

「もう一度」ではなく、「次の形で」

誤解しないでください。かつての子育てをもう一度やり直すことを、勧めているのではありません。

里親という関わりは、親子関係とは異なります。血のつながりも、法的な責任も、必ずしも必要ではない。

ただ、ある期間、ある子どもの傍らに立つ。それだけでいい。

週末だけ預かる形もある。短期間だけ受け入れる形もある。あなたのペースで、あなたにできる形で、関わることができます。

あるお方の言葉が、忘れられません

「子どもが独立したとき、自分の仕事は終わったと思いました。でも里親を始めて、気づいたんです。私はまだ、誰かの役に立てると。それがこんなに嬉しいとは、思っていませんでした。」
(58歳・女性/里親歴3年)

「正直、最初は『自分の子どもの代わりにしているのでは』と心配でした。でも違った。この子はこの子で、全然別の人間で——また一から、子どもに教わることばかりでした。」
(55歳・男性/里親歴2年)

静けさの先に、扉があります

子どもが巣立った後の静けさは、終わりではありません。

長い子育ての章が終わり、次の章が始まる前の一息の間です。

その静けさの中で、あなたの中に残っている「誰かを愛する力」が、次の行き先を探しています。

急がなくていい。すぐに決めなくていい。ただ、その力がまだあることを、忘れないでいてください。

そして、もし心が動いたなら扉は、開いています。


隊士 お館様管理者

藤の里における鬼倒隊を統率している者。私が初めて鬼の存在を知ったのは、ボランティアの場でした。 里親制度への無知と誤解という鬼が、日本中に蔓延していること。そのせいで、家庭で暮らせずにいる子どもたちがいること。里親になりたくても、なれずにいる人たちがいること。 その現実が、忘れられませんでした。 それからも何度もボランティアを重ねるたびに、鬼の大きさを思い知らされました。 私自身は里親経験者ではありません。 剣を持って戦える立場にはない。 だからこそ、実際に戦ってきた方々の記録を集め、次の誰かへ届ける場所を作ることが、私にできる戦いだと思いました。 藤の里は、その使命のために生まれました。 あなたの戦いの記録を、ここに刻んでください。 その呼吸を、次の世代へつないでいきましょう。

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