自分たちが男どうしで暮らしていること、それが世間の言う「ふつう」とは違うこと
翌朝、私が卵を割ったとき、ソウが台所に入ってきた。
「昨日、ハナちゃんと少し話した」
声が低かった。
私はフライパンから目を離さずに「そうか」と言った。
「学校で聞かれたみたい。
お父さんとお母さんはどんな人って」
卵が油の上に広がった。
白身の端がゆっくりと固まっていく。
私は火を弱めた。
「それで?」
「ふつうだよって答えたって。
でも帰ってきてからずっと、そのことが頭に残ってたみたい」
ソウは冷蔵庫を開けて、牛乳を出した。
三十一歳の男が、朝からそわそわしている。
普段と同じ動作なのに、今朝は少し落ち着きがなかった。
「ちゃんと話してあげたほうがいいよね。
俺たちのこと、説明するというか……」
「説明って、何を」
私は皿に卵を移しながら言った。
責めているわけじゃなかった。
ただ、本当にわからなかった。
自分たちが男どうしで暮らしていること、それが世間の言う「ふつう」とは違うこと、でもだからといってハナに何を伝えればいいのか。
謝るわけでもない。
誇るわけでもない。
「……うまく言えないけど」とソウが言った。
「ハナちゃんが困ってるなら、何か言ってあげたい」
「そうだな」と私は言った。
それだけだった。
二人で朝食を食べた。
ハナはその間、自分の部屋から出てこなかった。
八時になってドアが開いて、ランドセルを背負った小さな背中が「いってきます」と言った。
私は「いってらっしゃい」と返した。
玄関が閉まる音がして、家の中が静かになった。
シンクに重ねた三人分の皿から、湯気がゆっくりと上がっていた。
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